「他人にきびしく、自分自身に寛大なのは凡人の常だ」

 

 「他人にきびしく、自分自身に寛大なのは凡人の常だ。」これは、本田技研工業株式会社、通称「ホンダ」の創業者、本田宗一郎氏の言葉である。この言葉について本田氏は、著書「やりたいことをやれ」で以下のように述べている。
 「人は誰でも反省の重要さは一応知っている。しかし、必要な時に、必要な反省をしている人間は、意外に少ないものだ。(一部省略)反省となると、批判によって得られたデータをもとに、直接その患部への切開のメスをふるうことなのである。なまやさしい勇気ではそれはできないのだ。自己との闘争である。」
 反省をしなければならないのは誰もがわかっている事である。しかし、それができないのであればいつまでも凡人のままである。と本田氏は著書の中で語っている。日本の処理水放出に関する中国の対応はまさに日本にきびしく、自国に寛大であると言える。
 9月8日の日本経済新聞より、中国の李強(リー・チャン)首相は「核汚染水の排出は世界の海洋生態環境や人々の健康に関わる」と述べ、中国政府は日本産水産物の輸入を一時停止している。8月25日に、産経新聞に興味深いデータが掲載されていたので、それを図1に示す。

図1:世界の原子力施設の年間トリチウム排出量(産経新聞:8月25日)

 図1は、世界の原子力施設の年間トリチウム排出量を表した図である。フランスとカナダは21年にそれぞれ1京ベクトル、1190兆ベクトルのトリチウムを排出し、中国はそれに続いて3位の218兆ベクトルのトリチウムを排出している。この数字は日本の計画している22兆ベクトルの約10倍の排出量である。「自国はいいけど、日本はダメだよ。」と言うのは自己中心的ではないか。中国政府はこのデータをもとに、「自己との闘争」を行い、一刻も早く、日本産水産物の輸入停止措置を撤廃して頂きたい。

参考文献:産経新聞(8月25日)
     日本経済新聞(9月8日)
    「やりたいことをやれ」:本田宗一郎, PHP研究所